エネルギー関連の話題で、興味深い記事があった(1)。欧州で「循環経済」への取り組みが商用段階に入ってきたというニュースだ。
循環経済とは、天然資源の使用を減らし、かつ物持ちの良い製品を製造することで、環境負荷を減らすことを目的とする経済のことである(2)。
かつて高度経済成長時代の日本は、大量消費によって経済を循環させてきたが、これからは持続可能な発展を基礎とする循環経済を浸透させることで経済を発展させていかなければいけない。子供たちに対する責任でもある。
話を戻すと、このたび欧州で商用段階に入った循環経済に関する取り組みとして、フィンランドのパルプ最大手の企業の事例を挙げられている。樹木の伐採や造材時に発生する枝や葉、樹皮やのこ屑などの、いわゆる木質バイオマスを用いて、同企業の工場で使用する電力を上回る電気を発電し、余剰分を外部に販売するそうだ。
特筆すべきは、原料となる木材の残りカスもバイオガスなどを加工する材料となるので、原料由来の廃棄物を出さないことだ。
また、同じく欧州の産業ガス大手の企業では、リサイクルできないプラスチックごみからメタノールを生成する技術を持っており、オランダにこのプラントを建設する構想があるとのことだ。
これらの循環経済の取り組みに関する動向は、水素社会を実現させるためにも重要である。バイオガスやメタノールは、改質と呼ばれる操作で水素を取り出せるのだ。
日本もこの取り組みにならい、木質バイオマスやリサイクル不能なプラスックを活用し、再生可能エネルギーを用いた発電の推進と非化石燃料系の水素ガスを用いた水素社会を実現しなければならない。
将来、水素は今よりずっと身近なエネルギーとなっていると信じている。
電気自動車や燃料電池車を普及させるためには、水素スタンドや急速充電スポットを普及させなければならないが、これらの普及に駅を活用するのはどうだろうか。規模の大きい駅では商業施設が充実している場合が多いので、送り迎えに車を使用するお客さまには、送り迎えのついでに水素充填や急速充電ができるようにし、そのついでに駅でお買い物をしていただけるようにする。車の利用者も駅利用のターゲットとなり、新規顧客の獲得にもつながるので、インパクトが大きいと考えられる。
駅に水素スタンド・急速充電スポットを整備することによる、鉄道事業者と利用者のメリットデメリットを考えてみた。
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メリット | デメリット |
鉄道事業者 |
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利用者 |
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交通事故件数が増加することは、鉄道事業者と利用者の双方にとってデメリットとなるが、立体型のロータリーにすることで交通整理が確実にできれば、事故を抑止することができる。
周辺環境の悪化のリスクについては、燃料電池車や電気自動車が十分に普及することで解決される。
駅が混雑することによる利便性の低下は、駅施設がある程度混雑しても利用者がストレスを感じないような工夫をしなければならず、今後の課題になるだろう。
僕は、水素社会の到来による車社会のパラダイムシフトの鍵も鉄道にあると思っている。本来、自動車は鉄道の競合ではなく、利用者が自動車と鉄道双方のメリットを上手に享受できるような社会の仕組みを整えることで、世の中がさらに便利で快適なものになると考えている。こういうことを考えていると、わくわくする。
(1)日経電子版「燃料も原料も自給自足『循環経済』欧州で商用段階」
(2)HUFFSPOT「循環経済:ものの長寿化を目指して」